阿部剛史

(あべ つよし/博物館情報メディア研究系・助手)


 採集風景(マレーシア)

専門:系統分類学(海藻)

所属学会:国際藻類学会日本藻類学会日本植物学会北海道支部、北海道海洋生物科学研究会

研究テーマと主な業績:

1)紅藻ウラソゾの種内分化

ソゾ属には特異な含ハロゲン化合物を生成する種が多く、海藻の中では有機化学者によって最もよく研究された属と言われています。ほとんどの場合は種によって決まった化合物を生成するのですが、日本海周辺の固有種であるウラソゾは、地域によって全く異なる化合物を生成する複数の個体群から成ることがわかりました。これを、生物の種分化の前段階である race レベルの分化であると考え、化学成分を指標として各個体群の地理的分布や培養株同士の稔性関係、F1やF2個体が生じる化合物などを調べ、生物の種分化の機構を解明するモデルのひとつとして研究したものです。

2)紅藻ソゾ属の系統分類

ソゾ属 Laurencia は世界で約140種あるとされており、外部形態による分類が難しい種と言われてきました(なお、最近の研究により Osmundea, Laurencia, Chondrophycus の3つの属に分けるのが妥当であると考えられるようになってきました )。本研究は、今まで分類に使われてきた形質の再検討や、上述の化学成分やそれを蓄積するサクランボ小体と呼ばれる細胞内構造を分類形質として加味することにより、日本近海産ソゾ属の分類学的研究を行ったものです。

3)海藻相の解明

上述のウラソゾは対馬暖流とその支流に沿った分布を示します。これは本種が、最終氷期が終わり日本海に対馬暖流が流入を始めたときに、それに沿って分布域を拡大していったためだと考えるとうまく説明できます。ウラソゾだけでなく、このような分布様式を示す種・属は多数の海産生物で知られています。これらの種群はその起源をインド洋/南西太平洋の熱帯域にもっていると思われ、これらの海域の海藻相の把握は、わが国の暖海性海藻の系統分類学的研究に不可欠であるため、ここ数年これらの海域の海藻相の調査を行っています。また、対馬暖流はその大半が津軽海峡を通り太平洋側に抜けていくため、同じ日本海でも本州沿岸と北海道沿岸では海藻相に違いが見られます。奥尻島はちょうどその移行帯に位置するため、海産生物の生物地理学的に興味深い場所であることから、その海藻相の調査を行いました。

戻る