新着標本展

近藤喜代太郎/茅野春雄 コレクション

チョウとガに魅せられた研究者たち


ご挨拶

 2003年と2004年に計約1万点におよぶ鱗翅目(りんしもく)昆虫の寄贈を受けました。

 ご寄贈いただいたのは、北大名誉教授のお二人の先生方からです。実はお二人とも昆虫分類学(昆虫の標本をつかった研究分野)がご専門という訳ではなく、趣味として鱗翅目のなかま、チョウとガを集められておられました。

 近藤喜代太郎先生は、北海道大学医学部の教授をされていました。ご専門の研究分野は、公衆衛生学です。現在は、放送大学でご活躍されています。

 茅野春雄先生は、北海道大学低温科学研究所の教授をされていました。ご専門の研究は、昆虫生化学です。

 お二人とも、子供の頃からのムシ好きを、他分野の著名な研究者になられても忘れること無く続けられ、ご専門の研究と趣味の昆虫学を両立されてこられました。

 今回、北海道大学総合博物館にご寄贈いただいた標本のなかから、チョウのなかまを特に取り上げて展示させていただきました。あわせて学術標本の収集の重要性、専門的な標本の作り方、チョウの進化・系統・分類などについて、簡単に展示紹介してあります。

 華麗なチョウとガの世界を楽しんでいただければ幸いです。

北大総合博物館


近藤 喜代太郎氏の紹介

     ・略 歴
      1959年 東京大学医学部医学科卒業
      1984年 北海道大学医学部公衆衛生学教授
      1997年 放送大学教養学部教授大学
      19^^年 放送大学客員教授
     ・主な活動等
      1993〜95年 EU(欧州連合)ヤコブ病に関する疫学委員会委員
      1994年 世界神経学会・疫学委員会委員長
      1996年 日本人類遺伝学会第41回大会長
      1996年 第48回北海道公衆衛生学会会長

長年,主に疫学の立場で神経疾患を研究。


茅野 春雄氏の紹介

     ・略 歴
      1951年 東京大学理学部動物学科卒業
      1951年 農林省農業技術研究所昆虫科
      1953年 東京都立大学理学部助手
      1960年 東京大学理学部講師
      1964年 東京大学教養部助教授
      1973年 北海道大学低温化学研究所教授
      1991年 北海道大学名誉教授
      1993ー97年 北海学園大学教授
     ・主な活動等
      1961年 日本生化学会奨励賞
      1968年 日本動物学会賞
      1970年 朝日学術奨励賞
      1991年 東レ科学技術賞


鱗翅目(チョウ目)の系統関係


●チョウのなかまの系統関係

●最近のDNA解析により明らかになった系統関係


代表的なチョウの名前

●アゲハチョウ科

アゲハ、キアゲハ、アオスジアゲハ、ウスバキチョウ、カラスアゲハ

●シロチョウ科

モンシロチョウ、ミヤマシロチョウ、エゾシロチョウ、

●ジャノメチョウ科

クロヒカゲ、ヒカゲチョウ、ベニヒカゲ

●タテハチョウ科

オオムラサキ、ルリタテハ、クジャクチョウ

●セセリチョウ科

チャマダラセセリ、バナナセセリ、イチモンジセセリ

●シジミチョウ科

ミドリシジミ、ルリシジミ、ゴマシジミ

●ウラギンシジミチョウ科

ウラギンシジミ

●マダラチョウ科

アサギマダラ、オオゴマダラ、カバマダラ

●テングチョウ科

テングチョウ

●ドクチョウ科

日本には分布しない。南米にのみ分布。

●モルフォチョウ科

日本には分布しない。南米にのみ分布。

●フクロウチョウ科

●シジミタテハチョウ科

日本には分布しない。

●ヘリコニウスチョウ科

日本には分布しない。南米にのみ分布。


標本の収集

標本の収集には、次の方法があります。

(1)採集に行く:北大総合博物館ではネパールなどの海外調査で採集された標本が数多く収蔵されています。

(2)海外の博物館と交換する:ヨーロッパやアメリカなどの博物館と連絡を取り合い、標本の交換がおこなされます。

(3)個人収蔵コレクションの寄贈あるいは購入:北大総合博物館では、過去に高椋コレクション(鱗翅目)、ガロアコレクション(昆虫全般)、中根猛彦コレクション(甲虫目)などが個人コレクションから寄贈/購入されたものです。

これら3つの方法のうち、(3)の個人収蔵コレクションの寄贈が、もっともまとまった質の高いコレクションが収集される方法です。


個人コレクションから一般コレクションへ

標本整理の道のり

個人コレクションは、それぞれ特徴があります。例えば、箱、針、ラベルなど、使用している道具がコレクターによって異なります。また、生物体系の分類順に箱をわける場合や、採集された地域で箱をわける場合もあります。

北海道大学総合博物館では、それらの個人コレクションを一般コレクションと同じシステムで整理するために、次の方法を用いています。

(1)箱を「北大式昆虫箱」へ移動させる。

(2)寄贈元が分かるように「寄贈ラベル」をつける。

(3)配列は、生物体系の分類順とする。


鱗翅目昆虫の標本作成

(1)チョウや大きなガは、胸をおして圧死させます。ガはアンモニアもしくは酢酸エチルを使って殺します。

(2)展翅板を使用して、翅を広げます。

(3)2週間程乾燥させて、展翅板からはずします。

(4)標本には、ラベルをつけて完成です。

小蛾類は、小型の展翅板を使用します。これは専門家が開発し特別に注文して作成したものです。


偏西風とチョウの分布

偏西風は、西から東へ吹きます。
東洋区からオーストラリア区への移入種が多く、その逆が少ないのは偏西風の影響が考えられます。
東南アジア島嶼のチョウ分布の詳しい調査から、偏西風とチョウ分布の関連が深いことが明らかになっています。


ガ類標本

 近藤喜代太郎先生から寄贈された標本には、ガのコレクションが膨大に含まれています。

 現在はまだ未整理状態ですが、今後、科別、種別への分類整理が行われます。


チョウとガの関係

 チョウとガは、鱗翅目(りんしもく)に含まれる、翅に鱗粉をもつ昆虫です。上科間の系統関係の図からもわかるように、鱗翅目の多くはガのグループで、チョウはわずか2つの上科(セセリチョウ上科とアゲハチョウ上科)のみです。

 チョウとガは、一般に次のような違い(特徴)があると言われていますが、どれも例外があり、簡単に区別するよい形質はありません。

(1)チョウの触角は細く棍棒状、ガはより太い。(2)チョウは昼行性、ガは夜行性。(3)チョウの腹部は細く、ガはより太い。


展示室内の照明について

 本展示では資料保護のため、部屋全体を暗くしております。

 生物標本、特に昆虫標本は非常に光りに弱く、光にあたると色褪せがおこり、黄色く白っぽい標本になります。


終わりに

新着標本展 「近藤喜代太郎、茅野春雄 鱗翅目コレクション ーチョウとガに魅せられた研究者たちー」を開催するにあたり、標本をご寄贈戴いた近藤喜代太郎氏、茅野春雄氏に心から厚くお礼申し上げます。

これらの標本群が、今後の北海道大学総合博物館の教育、展示、研究の礎になることでしょう。

また、展示の準備に際し、下記の方々に御協力いただきました。厚くお礼申し上げます。

久万田敏夫、青山慎一、田中真理、古田未央、山本ひとみ、梅田(敬称略)

北海道大学総合博物館

展示担当 大原昌宏、澤田義弘


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