大学院共通授業「博物館学特別講義II 展示、教育、活動評価」

  • 第1回 4月 7日

    担当教員:湯浅万紀子

     本日のオリエンテーションでは、授業計画と授業のゴールが説明された。授業のゴールとは、各種博物館の展示の制作、教育プログラムの運営、活動評価について理論と実際を学習し、活動展開の現状を理解し、その課題を考察すること。授業の後半で実施する北大総合博物館の来館者調査とその分析においては、グループワークを実施し、大学博物館への理解を深めるだけでなく、総合博物館への提案と議論を通して、コミュニケーション能力とディスカッション能力、プレゼンテーション能力を習得すること。そして、これらの実践と考察を通して、博物館活動に限らず、自己の活動を検証し改善点を見出す自己評価の視点を得る機会とすることである。総合博物館に関連した他の講義や演習についても紹介され、この授業は後期に開講される「博物館特別講義I 学術標本・資料学」のシリーズであることも説明された。

  • 第2回 4月14日

    担当教員:佐々木亨・湯浅万紀子

     札幌でもようやく春を感じられるようになった今週、本格的な授業が始まった。今期の後半には、総合博物館の科学技術展示室のリニューアル後の来館者調査を行うことになる。このリニューアルは、文学研究科の佐々木亨先生が指導する展示制作プロセス演習に総合博物館の湯浅万紀子先生が協力し、ゼミ生達が2007年度から取り組んできた。今日はまず教室で、佐々木先生から、リニューアルの動機、来館者調査の実施、調査の分析に基づいたリニューアルの経緯を説明していただいた。その後、展示室で実際にリニューアルした箇所を見ながら、湯浅先生とリニューアルに携わった文学研究科の院生の山田祥子さんからそれぞれの詳細な説明をしていただいた。また、調査を行うに際しての注意点(実際に調査に参加することの意義など)を教えていただいた。
    私自身も展示解説ボランティアとして来館者に接していて、データだけでは分からない、いわば来館者の生の声を聞くことの重要性は感じており、その意義についての考えは持っているつもりだが、本講義に参加した全学生がそうとは限らない。しかし、今日の講義は博物館活動に関わっていく上でのイントロダクションとして、学生一人一人が考えることの重要性を感じさせるものであった。今後、それらの考えを熱く語り合うことになるのが楽しみである。(理学院自然史科学専攻博物館学研究室 石田祐也)


  • 第3回 4月21日

    担当教員:小林快次

     今学期3回目の授業からは、総合博物館の小林快次先生による、自然史系博物館に関する講義が始まる。三週にわたる講義の初回である今日は、小林先生が実際に企画・運営を務めた福井県立恐竜博物館での展示企画を中心に、実際の学芸員ならではの経験をもとにお話しいただいた。
    展示企画を実現させるための様々な裏方的仕事については、実際に使われた資料(企画書、図面、収支試算等)も交えながら、企画準備のさまざまな局面に関する紹介があった。例えば予算や費用については、事務員とともに、学芸員みずからが過去の実績などをもとに膨大な資料作成をするそうだ。また、展示業者とのやり取りでも、業者側が提示する企画書を、デザイン(見栄え)だけなどで判断せずに、実現可能性を見定めるための業者との厳しいやり取りも欠かせない、とのこと。 現場で培われた経験やノウハウをフル活用しながら、タフな行程を一つずつクリアして大きな企画展などの実現にこぎつけている様子を垣間見た思いがした。
    また、講義を通して小林先生が強調されていたのは、このような膨大な時間や費用を伴う博物館展示について、「なぜこのようなものが必要なのか」という問いを追求し続けなければならない、というメッセージだ。限られた予算は市民の税金で成り立っているものであり、莫大な金額に見合った意義が求められるのは当然のことである。だから、たとえば「恐竜博物館」が、恐竜好きの人たちの興味を満たすためだけのものであってはならない。 それならば、たとえば恐竜に関する展示を行う意義について、どのような説明をすることが可能だろうか。あるいは、どこまで本当に意義のあることだと言えるのだろうか。
    これは、福井の恐竜博物館に限ったことではなく、博物館施設全般、あるいはもっと広く捉えれば、多くの学問分野について、忘れてはならない視点である。今後、この博物館学特別講義で展示評価を行う際にも、展示を行う意義や、博物館を運営していく上での使命・責任などについて、どのような形で展示評価に反映していけるか、自分なりに考えを具体化していくことを目指したい。(理学院自然史科学専攻科学基礎論研究室 井上拓己)


  • 第4回 4月28日

    担当教員:小林快次

     第4回目の授業となる今回は、前回から引き続いて小林快次先生の講義であった。前回、先生より提示された「なぜ(博物館、研究、展示などが)必要なのか?」ということをベースに、図録と教育普及を中心にお話をしていただいた。まず、博物館で販売されている図録がどのように作られているのかという一連の流れを実際の資料(執筆要項やレイアウトなど)をもとにしながら、経験に基づいてお話いただき、実際作業を進めていく中で、複数の執筆者がいる場合は事前にファイル形式などを細かく決めておいたほうがよいなど実践的な意見を知ることができた。また、現在、北大総合博物館で行っている教育普及についてのお話では、大学生へ対しての活動として、博物館内での活動以外に、一般教育として「自立心を育てる」ことを考慮しているというお話を伺った。また、ボランティアにご協力いただいている方々や地元の方々の協力が大きな力となっていることについても紹介いただき、博物館が市民なしには存在できないことを改めて認識した。ミュージアム・ショップでの「売りたい、でも儲けるのが目的ではない」という博物館の持つ微妙なジレンマについても、木曜日の3講目に行われている博物館コミュニケーション特論(授業報告http://museum-sv.museum.hokudai.ac.jp/activity/education/hakucom/09/)でミュージアム・グッズの開発を行っているので、実践的に考察できた受講生は多かったのではないだろうか。そして、博物館評価に関しても、判断項目をどこに置くのかで博物館の方向性がかわり、現在起きている博物館でも問題を基に、入館者数や興行収入に重点を置くことの危険性についても警鐘していただいた。個人的には、現在行われている教育プログラムがどの程度教育的効果のあるものなのかという問いが一番興味深かった。最後に、先生ご自身が考える研究への意義についてお話いただいたが、どの切り口から考えても、これから、博物館や各自の研究への意義について常に自分なりの答えを探していく必要があると強く感じた。 次週は休講となるが、連休明けから今回の講義の続きをしていただき、今後も受講生たちは「なぜ(博物館、研究、展示などが)必要なのか?」ということについて各自で答えを模索していくこととなる。(文学研究科地域歴史文化学専攻北方文化論講座 井口依子)


  • 第5回 5月12日

    担当教員:小林快次

     本講義における小林快次先生の最後の回である。三回目となる今回は二つのことに関して、お話していただいた。一つ目は、いかにして、先生が恐竜研究者になったのかという経験談を通じて、夢を持つ、かなえるということに関して。二つ目は、アンケートを通じての博物館の評価についてである。
    以前に小林先生が行った、「夢」に関する講演をもとに、先生が恐竜研究者になった経緯、仕事をする意味などをお話ししてくださった。そもそも夢を持つということは、重要なことではなく、先生が日本では数少ない恐竜研究者になりえたのは、目の前のことを乗り越えるという積み重ねであり、そうすることによって導かれた現在の到達点が、たまたま恐竜研究者であったということだ。はじめから、夢を持たなければいけない、かなえなければいけないということはなく、三日坊主でも良いから、興味を持ったことにとにかくチャレンジする。そして、自分の方向性を模索していくべきだとのことである。
    その際に、大事なことは、自分の行動、研究がいかなる意味を持つのかを考えること、これは先生が全三回にわたり私たちに伝えようとしてくださっている一番のメッセージであり、私たちの課題である。それを理解した上で、自信を持つことである。そして、様々な人間関係を大切にすることである。そうすることで、おのずと、自分の方向にある山の頂上に、着実に歩んでいけるのである。われわれが今後どのようにキャリアプランを立てていくべきかということに示唆を与えてくださり、大変参考になるものだった。
    アンケートを通しての、博物館の評価に関しては、アンケートの改善と集計方法についてのお話があった。博物館を来客者数ではなく、その質によって評価するためには、従来博物館で行っていた来館者の基礎データ(性別、年代、職業等)の集計にとどまらず、来館者の博物館に対する意見を探り出す必要がある。そこで博物館が知りたい情報を得ることができるように、具体的な質問項目を設け、五段評価とコメントを記入できるアンケートを作成した。さらに、単純集計ではなく、二つの質問の組み合わせで集計を行うクロス集計を行うことにより、二つの質問の回答にどのような関係があるのかを把握できるようになった。たとえば、来館数が多いほど満足度が低く、年代が低いほど来館時間が少ないなど、単純集計では見えていなかった問題や現状があぶりだされてくるようになった。しかしここで注意しなければならないのは、統計的にとったデータについて、判断を行う際には、常に私たちの主観が伴われているということである。半分しかない水と判断するか、半分もある水と判断するか。アンケートの集計、解釈は慎重に行う必要がある。現状を把握することは、快いものではないが、より質の高い博物館を実現するためには必要不可欠なことである。(文学研究科 山際晶子)


  • 第6回 5月19日

    担当教員:石森秀三

     今回から3回にわたって、民族学博物館に31年間勤務されていた石森先生に講義をしていただく。初回は「今なぜ民族学博物館に注目すべきなのか?」というテーマについて、ご自分の1978年のミクロネシアでの文化人類学に基づく調査の記録と、その時に得た知見について、スライドを用いて説明してくださった。
    「未開社会」という言葉は「われわれに達していない未開発の文明社会」というように、明らかに差別的視点が加えられた言葉である。石森先生の経験から、「未開社会」の一つであるミクロネシア(サタワル島)には「近代文明社会」とは異なる価値体系が組み立てられていることがわかる。当時、島には病院がなく、周囲の島との行き来も容易に行うことができない。「近代文明社会」の視点から見れば、確かに不便であり、衛生面にも問題があると言えよう。
    しかし、彼らには「近代文明」の物差しだけでは計ることのできない、独特の価値体系が存在する。たとえば、彼らは漁で手に入れた食料を平等に分配し、食糧不足の際には体力がないとされる者から順に分配していく。男女の分業は明確になされており、相互扶助的な生活を送っている。労働時間は3〜4時間程で、基本的に富の蓄積を行うことはない。また、彼らは年長者に対する深い尊敬心を持っている。
    民族学博物館に注目する意義の一つは、こうした価値体系の異なる、つまり文化の異なる人々を知ることである。いま日本では、文化(自文化・異文化)に対する考えが軽視され、博物館や美術館の年間予算は縮小される一方である。しかし、石森先生の「無用の用という言葉があるように、一見役に立たないと思われるものが大きな意味を持つことを信じている」というメッセージは、これから私たちが考えるべき問題を示唆していると感じた。(国際広報メディア・観光学院観光創造専攻 野中萌)


  • 第7回 5月26日

    担当教員:石森秀三

     第7回目の講義は石森秀三先生から「民族学博物館の諸相」について講義をいただいた。 
    講義は大きく分けて、ミュージアムの語源から民族学博物館誕生までの歴史と、民族学博物館の紹介の2点についてである。
    まず民族学博物館誕生までの歴史についてだが、museumの語源はギリシア語のMouseion(ムーセイオン:叙事詩・歴史・叙情詩・喜劇・悲劇・合唱歌舞・独唱歌・賛歌・天文の9つの分野を司る女神に捧げられた神殿という意味=学問の府)からきている。古代・中世の欧州では権力者のコレクションとして財宝が収集され、大航海時代では非西洋世界の植民地化により、王侯貴族の「世界」を所有するという権力の証として珍品・稀品が収集された。例えば、キャプテン・クックらが3回の航海で発見したコレクションはヨーロッパで高い評価を受け、大英博物館の「南海の部屋」(1778)で紹介された。欧米諸国では1850年以降の帝国主義時代に、大学の附属博物館として民族学博物館が設立された。そしてそれは文明未開化という差別の表象でもあった。日本で国立民族学博物館ができるのは1974年のことである。
    2点目の民族学博物館の紹介はビデオで行われた。ここでは印象に残った博物館を紹介する。カナダの国立文明博物館(民族と歴史を展示している)はまるでテーマパークのような体験型博物館である。当時の身なりをした係員が歌や音楽を使って歴史を再現し、また展示パネルのみならず音・映画・CD-ROM・影など何重もの仕掛けを作ってターゲットごとに効果的な展示方法を考えている。国立民族学博物館のソウルスタイル(2002年の企画展)では韓国のある一家の暮らしをそのままマンションごと再現し、「実際に暮らす」体験をして五感で感じてもらおうという企画展だ。博物館というと日常では使われることがなくなったものや伝統的な展示物が多いが、現代における変化を反映する展示も必要であると考えさせられた。
    最後に、博物館の評価は入館者数で問われることがどうしても多い。上に述べた博物館以外でも様々な工夫がなされている。しかし入館者数だけではなく、博物館に来て利用者がどれだけ満足して帰ったかというクオリティについても我々は考えていかなくてはならない。(観光学高等研究センター研究生 三升直子)


  • 第8回 6月 2日

    担当教員:石森秀三

     石森先生に講義をしていただく最終回である今回は、「民族学博物館は不要か?」というテーマでお話いただいた。帝国主義の時代に創設された博物館と、発展途上国における博物館を事例に、それぞれの博物館が果たした役割を説明されたのち、民族学博物館の今日的な課題、博物館の必要性について述べられた。
    帝国主義下のオランダでは、王立植民地博物館が創設された。その名のとおり、植民地の研究を目的とした博物館であったが、やがて、植民地は減少し戦争が終結すると、当初の設置目的は時代の流れにそぐわないものとなる。そこで3年間休館をし、環境問題や食糧問題、民族問題など今日的な課題に取り組んだ新展示をオープンさせた。一度設置した館を大幅に変更することは非常に難しいことであるにもかかわらず、時代に即した展示に取り組んでいるこの館は、評価すべき事例として紹介された。
    一方、植民地から独立を背景にもつメキシコやフィジーでは、国家や民族のアイデンティティを表明するための国家的装置としての役割を民族博物館が果たしているという。これらの博物館が、植民地時代に虐げられてきた自国の伝統文化や先住民族について再認識させ、民族のアイデンティティを回復させるために必要不可欠なものであることを指摘された。
    では、先進諸国の博物館は不要か?この問いに対して、石森先生は、文化多様性の時代である今日、「文化的安全保障」という観点から、先進諸国においても民族博物館は重要な役割を果たしうる、と述べられた。また、博物館を必要としている発展途上国に対し、金銭面の支援だけでなく、適切な博物館の設置を助けられるようなODAを推進すること、そしてそのための人材育成に努力することも、先進諸国に求められていることであるという。以上のような活動を実現させるためには、利益がないとみなされがちな文化的活動に対し、「文化資本」という価値、文化的活動は国民生活の質的向上に必要不可欠な無形資本なのだという認識を主張してくべきであるとされた。
    これらの石森先生のご指摘から、今日の経済不況の中で不要なものとされてしまいがちな博物館の存在意義を、博物館と関わっていきたいと考えている我々学生こそが、ひろく訴えていかなければいけないのだと考えさせられた。(文学研究科思想文化学専攻芸術学講座 尾形佳菜)


  • 第9回 6月 9日

    担当教員:鈴木幸人

     文学研究科の鈴木幸人先生による講義の第1回目である。鈴木先生は、現職に就かれる以前の1993年から2004年にかけて、大阪市立美術館で学芸員として勤務されたご経験を踏まえて、全3回の講義をしてくださることになっている。今回はその初回ということで、主に先生が以前お書きになったエッセー「“展覧会的知”ということ-美術館をめぐる対話のための前提、私案」(『熱風』06年4月号に収録)を手がかりに、現在の美術館が抱える問題についてのお話があった。また、美術館、あるいは学芸員という職業に対する先生ご自身の考え方の方向性が示された。
    指定管理者の導入により、議論が活発になっている昨今の公立施設の運営問題を巡り、美術館という施設もまたその例外ではない。しかしわれわれの関心が運営形態上の問題にばかり向けられるために、「そもそも美術館とは何のために、誰のためにあるものなのか」という美術館の機能そのものについての文脈を読み飛ばし、経営面やサービス面での経済効果にのみ関心が向かってしまっている場合も多い。本来、展覧会とは訪れた人の「知性や感性を活性化」する場であり(エッセーの中では「展覧会的知」と表される)、それを目的に開かれるものであって、決して来館者を増やすことや美術館の利益を生み出すこと、地域に経済効果をもたらすことが第一の目的となってはならないし、少なくとも現場に携わる人間は、そうであってはならない。
    先生のお話やエッセーを通して、私たちは1人の学芸員として先生が経験され実感された事象を、言わば一つのサンプルとして提示していただいたように思う。このサンプルをもとにどんなふうに自分自身の博物館あるいは展示に関する考えを構築していけるのか。先生のお話ひとつひとつが、まさに我々の知性や感性を刺激する展覧会の作品のようであり、今後の授業も楽しみになった。(文学研究科思想文化学専攻修士2年 松崎 なつひ)


  • 第10回 6月16日

    担当教員:鈴木幸人

     鈴木先生の講義2回目。導入は、ご出身の町のあれこれ。そして先生の長年勤務された大阪のこと。「ホスピス都市宣言」「大阪落城博覧会」など、初っ端から意表をつくキーワードが繰り出される。……だが、これらが博物館とどうつながるのか?と疑問を抱きかける私たち受講生の心を読むかのように、「(私の話は)全部つながっているんだよ」と、注意を促す鈴木先生。お話の最後まで、けっして気を抜けない。
    今回は主として三つの事例をもとに、先生のご経験をうかがった。まず、大阪市博物館施設問題研究会(大博研)である。これは、2003年に大阪市で当時25を数えた博物館施設の学芸員や各施設を管理する市の部局の職員などを参加者として設立された。日常的には相互の連携が少ない博物館施設の関係者が集まり、地域の博物館が抱えるさまざまな問題に合同で取り組む自主的な研究会である。
    次の事例は、先生が大阪市立美術館の学芸員として担当された「天神さまの美術」展(2001年7〜12月開催)である。この特別展は、菅原道真没後千百年を記念して、大阪・東京・福岡の3会場を巡回するかたちで行われた。調査活動には実質3年間かけ、調査のため全国の天満宮や個人所蔵者など約200軒を訪問したという。その企画は各会場の特徴を最大限に考慮して進められた。たとえば大阪会場では、天神信仰の多様性を示すため、講演会のほか連歌会や文楽人形によるパフォーマンスなど、多様なイベントを開催した。
    最後に、「円山応挙」展(2003年9月〜2004年3月開催)の事例である。これは、大阪・福島・東京を巡回する特別展であった。監修者に応挙研究の大家である佐々木丞平・正子夫妻を迎え、代表作のすべてを公開した。最高の環境で大乗寺を再現するため、展示ケースはすべて特注し、金地が生えるように照明にも工夫を凝らした。会場の空間を最大限に活かした立体感ある展示は、それ自体が一種のパフォーマンスとして来場者を楽しませた。
    以上三つの事例をとおして、地に足をつけた学芸員の強さ、ということを考えさせられた。学芸員は、つねに地域・社会に対する関心を絶やさず、その特殊性(地域性)を知っていること、そして、働き場である博物館施設の特徴をよく知っていることが大切である。それでこそ、協力機関や展示業者から信頼を得、会場の特徴と展示物の特徴の双方を活かして、見る者の心に訴える展示ができる。導入のお話は、こうしたメッセージの伏線だったようだ。
    こうして、今回のお話がまた次回へとつながっていくに違いない。やはり、鈴木先生のお話は、最終回まで気を抜けない。(文学研究科歴史地域文化学専攻北方文化論講座 山田祥子)


  • 第11回 6月23日

     今回で3週にわたって講義していただいた鈴木幸人先生の最終週であった。先生には一貫して博物館の展示と経営という、実践的な側面の問題点が提示された。
    先生は2タイプの展覧会の形を提示されたように思う。
    まずは先生自身が手がけられた、「煎茶 - 美とそのかたち」展が、その一つであった。ここでは大阪を中心として往時は上流文化の一部であった煎茶を再度評価する形の展覧会であり、煎茶にまつわる器物を展示するにとどまらず、その根幹をなす「文人趣味」を中心とした派生的な側面にも光を当て、書、画、その文房まで広く取り扱った展覧会として開催された。また煎茶会を行い、カタログの装丁に至るまで凝り、総合的な展覧会をコーディネートしたとも述べられた。こういった広い分野にまたがる対象を展覧会で取り扱う場合、各専門学芸員の共同はもちろんのこと、外部の組織ともうまく連携をとらねばならないと強調された。ここで一つの展覧会のかたちがみえるように思った - つまり地域の博物館・美術館から組織的に構築するタイプの展覧会である。
    しかしもう一方のマスコミと企画会社が主導するタイプの展覧会の場合、収入を重視して、展覧会の内容がその公共的な性格にとってふさわしくないものとなりうることも指摘された。また各博物館にはそれぞれの適正な来館者数とも言うべきものがあり、それをオーバーすると、確かに収益はあがるものの、全ての来館者に行き届いた教育・学習のサービスを提供できなくなる。だが我々がいつも立ち戻らなければならないのは、市民のために公立の博物館は存在するということであると強調された。確かに今までに学んだとおり現在の博物館の経営は困難なものであるだろう。しかしそのために「公共性」と「教育・学習」という博物館の根本理念を揺るがすことがあってはならないはずである。
    かといって全ての外部機関との連携を断ち切ることは全く現実的ではない。先生が配布された資料にも、展覧会における外部メディアの重要性が説かれていた。ゆえにこれから我々はそういった様々なすり合わせの中で、ぶれない軸をもって博物館の活動に取り組んでいかなければならないのではないだろうか。(文学研究科思想文化学専攻芸術学専修 修士1年 松藤岳)


  • 第12回 6月30日

    担当教員:佐々木亨・湯浅万紀子

     小林快次先生、石森秀三先生、鈴木幸人先生による講義が終了し、第12回目となる今回からは、総合博物館・科学技術展示室のリニューアル後の評価に向けた活動がスタートした。今週の授業は、前半では今後の活動について佐々木先生よりガイダンスをいただき、後半では来館者調査に向けたデモンストレーションを行った。
    この評価活動の目標は、来館者調査を通してリニューアルの成果を検証し、検証結果を総合博物館スタッフにプレゼンすることである。この目標に向けて、まずは実際の作業を1.定量的データの分析、2.定性的データの分析、3.比較、4.結論構築とプレゼン、という4つのプロセスに分割した。プロセスごとに班を作り作業を分担することになるが、班については昨年度の報告書(MLに掲載)を参考に、各自の希望を次週までに明確にしておくこととなった。来館者調査については、トラッキング調査を行うトラッキング班と、モニター調査を行うモニター班の2班に分け、それぞれ担当者を決定した。次週の授業時までに各自で来館者調査を行い、データをExcelに打ち込んでおくこととなった(形式はML参照)。各自のExcelファイルは、MLに流す、もしくは授業時にUSBなどで持参した後、ファイルの一本化を行う。
    後半は1階の展示室へ移動し、二人一組となってトラッキング調査のデモンストレーションを行った。自ら調査者・被調査者の双方を体験することにより、調査時に注意すべき点などに気付くことができたのではないだろうか。佐々木先生、湯浅先生からは、調査時には「調査中」のサインボードを置くこと、名札をつけること、インタビュー時には調査の主旨などを伝えること、あいさつを忘れないことなど、調査を行うにあたっての幾つかの注意点をアナウンスしていただいた。
    今後活動が本格化していくが、全員が協力し、最終的な目標に向けて邁進していきたい。(文学研究科地域歴史文化学専攻北方文化論講座 久井貴世)


  • 第13回 7月 7日

    担当教員:佐々木亨・湯浅万紀子

    先週の授業から1週間で、受講生はトラッキング調査とインタビュー調査、モニター調査を実施し、当初の目標をほぼ達成できた。今後、来館者情報や行動パタン、ストップポイントなどに関する定量的な データを分析したり、インタビューやモニター調査の自由回答文など定性的なデータを分析していく。4つのグループに分かれ、役割分担を決めて分析を試み、来週の授業時に各グループから発表を行うこととした。


  • 第14回 7月14日

    担当教員:佐々木亨・湯浅万紀子

     調査対象者のプロフィール、行動パタン、自由記述回答などについて4グループから分析結果が報告された。いくつか分析方法の課題を確認し、対応策を講じた。2年前に実施したリニューアル前の調査との比較を更に進め、分析結果をまとめていく。次週までに、博物館へのプレゼン資料をまとめるプレゼン班に分析結果を集約することとした。


  • 第15・16回 7月21・28日

    担当教員:佐々木亨・湯浅万紀子

    本授業で行った調査分析結果を8月第一週に博物館教職員にプレゼンし、議論することになった。プレゼンに向けて、データの解釈、データの提示方法などを全員で点検して、準備を重ねた。

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